チームラボアーキテクツが手がけたこの五感型アート体験空間は、総床面積17,000平方メートルに及ぶ。teamLab Phenomena は、チームラボの新たなコンセプト「環境現象」に基づいており、独自の環境によって生じる現象そのものから作品が生み出されている。本展の作品は、それぞれが独立して存在するのではなく、作品を生み出すさまざまな現象を生起させる「環境」そのものによって成立している。 今回のチームラボフェノメナはいつも我々が行う空間作りと逆の順番でつくっていったことが挑戦的だった。まず、コンセプトとして自然にある有機的な形状と環境により形状がきまる環境現象というコンセプトがつくられた。そのため、人間行動がつくりだす作品空間の集合体を今回のプロジェクトのスタートにすることに決めた。そのあと、橋から見え、海のそばの敷地に決め、敷地にあわせて作品空間を決めた。そして、アブダビベースの設計事務所であるMZアーキテクツにファサードをデザインしてもらっている。通常は、ファサードを決め、内部の壁を決めていくが、今回は逆で、自由に内部空間を決めて、そのあと、外部ファサードを決定している。そのため、建築の外形をみると、内部の形状がそのまま現れている部分があることがみてとれる。 この複雑な3D曲線を実現するには、デジタルで作成した形状を、現実の空間で誤差（ギャップ）なく再現することが必要である。そのために、複数の関係者とのデータやり取りが重要になった。開発したソフトによって、施工図面の自動作成を支援した。 巨大な柱のような物体が、森のように立ち並ぶ空間がある。見る人はそれを柱だと感じるが、実は建物を支える構造ではない。これは視界を遮り、奥行きを生み出すことで好奇心を刺激する演出であり、中にはプロジェクターやセンサーなどの機材が収められた設備用の柱である。つまり、構造上は柱のない広大な空間だ。 今回、我々の作品体験のベストな環境をつくりあげるために7年間の間に多くの世界中からプロフェッショナルな人たちが集まり協力し実現していった。 それは、デジタルアートを空間にして、複数人で同時に体験できる世界。有機的な形状の空間は人間と空間の境界をなくす。この世界はデジタルとリアルに境界がよりなくなり、作品は鑑賞するものから作品という環境ですごすものになる。これはデジタル空間ではなく抽象化した自然そのものである。 受賞歴のある建築事務所 MZ ARCHITECTS がリードアーキテクトを務め、 チームラボアーキテクツがコラボレーティブアーキテクトとして携わった本会場は、建築的革新と芸術的ビジョンが見事に融合した空間で、卓越したミュージアム体験を提供する。 ファサードデザイン：MZ Architects